初子の日
天保三年(1832)九月
作詞 二代目 劇神仙
作曲 四代目 杵屋六三郎
〈本調子〉 
鴬の初ねの今日に袖連れて 曳くや小松の千代の影 心長閑けき春遊び 
野辺はまだ うら若草の妻定め 心の帯は何時の間に 解けて他所目はつれなく見せて 
知らぬふりして白雪の あのしらじらしい顔わいな 
忍び車の通ひ路も 曇る夕を思へばほんに 粋な月夜で有りながら 軒の霞の引く袖に 
惜しむ別れのある事も 知らで憎さの百千鳥 声に明け行く窓の戸の はしたないのも恋の癖 媚かし
[合方]

〈二上り〉 
咲き初めし 梅を縁の始めにて かざす桜の色も香も 花ですむ世を浮気に拗ねて 
気儘らしさの枝ぶりも 折りてゆかしき花活の 水も濁らぬ末かけて 梅と桜の花心 うらやまし 
東風そよぐ門松に 追羽根の音手鞠唄 添へて尽きせぬ万代の声