雛鶴三番叟
宝暦五年(1755)か


[謡ガカリ]〈三下り〉 
とうとうたらり たらりら たらりあがりららりどう 
所千代まで翁草 菊の四季咲式三番 可愛らしさの姫小松 木蔭に遊ぶ鶴亀も 座元の名にし生ひ繁る 
竹は櫓の幕の紋 御贔屓頼み揚幕や とんと居なりに此の舞台 我等も千秋さむらはう 
凡そ千年の縁は 二つ枕に結んだり 又万代をかけし契りは 水も漏らさぬ中川に 
橋を渡すは何と言うたらよかろやら つい言うて言ふやうに 鳴るは瀧の水 
絶えず逢ふ瀬を松の葉の 色は変らじただ何時までも しやほんに 
なじょの翁のあだつきは 添ふも千歳仲人して 心の丈を尋ばかり 
明して結ぶ妹背山 扨もよいよい好い仲同士は 天下泰平国土安穏 今日の御祈祷なり
[合方 狂言ガカリ]

おおさえおおさえ喜びありや 喜びありや有明の 月の出潮に青木が原の 
浪の声々打つや鼓の松吹く風も 颯々として 澄むなり澄むなり 音もすみ吉の 
幾代経ぬらん夜遊の舞楽に 拍子を揃へて 足拍子揃へて 時も夜明の烏飛び 袖を返して面白や 
在原や高天が原に住吉の 四社の御前で扇を拾うた 主にあふぎの辻占は そりゃほんかいな 
逢ふとは嬉し 真ぞこちゃ嬉し 四社の御田の苗代水に 結ぶ縁の種おろし そりゃほんかいな 
結ぶも嬉し しんぞこちゃ嬉し さア住吉様の 岸の姫松目出度さよ 
実に様々の舞の曲 指す腕には悪魔を払ひ 納むる手には寿福を抱き 
千秋楽には民を撫で 万歳楽こそ目出度けれ