黒  髪
天明四年(1785)十一月
作詞 初代 桜田治助
作曲 初代 杵屋佐吉
〈三下り〉 
黒髪の 結ぼほれたる 思ひには とけて寝た夜の 枕とて 一人寝る夜の 仇枕 
袖は片敷く 妻ぢゃというて 愚痴な女子の 心も知らず しんと更けたる 鐘の声 
昨夜の夢の 今朝覚めて ゆかし 懐かし やるせなや 積もると知らで 積もる白雪

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ここに「黒髪」のほんの一部をYouTubeで紹介しています 見られない方はこちらへ


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歌舞伎「大商蛭小島(おおあきないひるがこじま)」中で用いられた独吟のめりやすです。
自分の夫である頼朝を、数々の事情から北条政子に譲らなければならなくなった辰姫。
二人を二階の閨に見送った後、ひとり黒髪を梳く「髪梳き」の場面で演奏されます。
途中ふと手を止めた辰姫の、「なんぼ心で心に異見しても、おもうまい、いうまいと思うて見ても……」
という台詞に、こらえようとしてもこらえきれぬ嫉妬の苦しさ・切なさが表れます。
知らぬ間に降り積もった「白雪」は、若く美しかった「黒髪」が恋の憂さに年を経た果ての姿とも読めます。
地歌筝曲にも同名の唄があり、どちらの成立が先か長年論議の多い曲です(【成立について】参照)。


■「黒髪」の解説・現代語訳・語句注釈のつづきは、

『長唄の世界へようこそ 読んで味わう、長唄入門』(細谷朋子著、春風社刊)

に収録されています。
詳しくは【長唄メモ】トップページをご覧ください。