手 習 子
寛政四年(1792)四月
作詞 増山金八
作曲 初代 杵屋正次郎
[前弾]〈三下り〉 
今を盛りの花の山 来ても三芳野花の蔭 飽かぬ眺めの可愛らし 遅桜 
まだ蕾なり花娘 寺子戻りの道草に てんと見事な色桜 雛草結ぶ島田髷 はしたないやら 恋ぢゃやら 
肩縫い上げのしどけなく こより喰ひ切る 縁結び ほどけかかりし 繻子の帯 振りの袂のこぼれ梅
花の笑顔のいとしらし 二つ文字から書き初めて 悋気恥づかし角文字の 直ぐな心の一筋に 
お師匠さんのおしゃったを ほんに忘れはせぬけれど ふっつり悋気せまいぞと 
たしなんで見ても情けなや まだ娘気の後や先 あづまへもなきあどなさは 粋なとりなり目に立つ娘 
娘々と沢山さうに 言うておくれな手習おぼえ 琴や三味線 踊りの稽古

〈二上り〉 
言わず語らぬ我が心 乱れし髪の乱るるも つれないは唯移り気な どうでも男は悪性もの 
桜々と謡はれて 言うて袂の分二つ 勤めさへただうかうかと どうでも女子は悪性者 
東育ちは 蓮葉な者ぢゃえ 
恋のいろはにほの字を書いて それで浮名のちりぬるを わが世誰そ 常ならむ
心奥山けふ越えて 逢うた夢見し嬉しさに 飲めども酒にゑひもせず 京ぞ恋路の清書なり 
夫のためとて天神様へ願かけて 梅を断ちますめいはく サア我一代 断ちますめいはく 
梅を 梅を断ちますめいはく サア我一代 実ほんに さうじゃいな 品もよや 
諸鳥のさえずり 梢々の枝に移りて 風に翼のひらひらひら 
梅と椿の花笠着せて 梅と椿の花笠着せて 眺めつきせぬ春景色