桜花の巻は風の曲
〈本調子〉
弥生半ばの空うららかに 野辺も山路も時めきて げにのどかなる春の色
佐保姫が霞かけたる薄衣は 空さえ花に酔ひ心
尽きぬ眺めに分け行けば 木の間に遊ぶ 百千鳥 春の小唄や唄ふらん
〈一下り〉
[嵐の曲]
折しもさっと吹く風に 水なき空へ立つ浪の また吹き下す雪の庭
[風の曲]
蝶も戯れて ひらひらひら ともに浮かれつ 立ち舞へる
手毎にかざす花の枝 あかぬ色なる春のたそがれ
紅葉の巻は雨の曲
〈二上り〉
薗生の垣に香をとむる 菊の葉露もいつしかに おのづからなる秋の色
手染めの糸の龍田姫 織り出す錦くさぐさに 人の心のなびくまで
見ゆる姿の 優しさも 旗手の雲のいと早く
〈三下り〉
時雨降るなりさらさらさら
[雨の曲]
濡れて色増す紅葉ばの 数は八汐か九重の 十二単衣の紅と
数へ数へて幾汐か 雨に風情もいと深き 秋の名残を眺むならまし
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「長唄の会」トーク 2019.03.13
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