〈本調子〉
下総や 武蔵の間の一流れ 心も隅田の川上に 寄するは春の友なれや
尽きぬ眺めの 花の香を 茶壷に詰めし初昔 変わらぬ色のいさをしに 飽かぬ遊びの流しだて
立てし誓ひの行く末は その姥口のふとん釜 二人しっぽり嬉しい中を 誰が水さしてかへ帛紗
さばき兼ねたる中々に 思ひの丈の竹台子 そのおりすゑの末までも
月と花との戯れに 過ぐるすさびの面白や
見渡せば 流れに浮む一葉の 中の小唄の顔見たや ?
桜がものを言はうならば さぞや悋気の種であろ?粋な隅田の水鏡
焦れ逢うたる舟の中 余所の眺めのもどかしや
〈二上り〉
君を待つ 香の薫りの床しさに ?恋の関路の色深く
染むる柳の瀬に映る ?風の姿のいとしさに いつか誠を明してそして ?約束堅き女夫石
はたで見る目の楽しさよ 花の数々かぞふれば 松は朧に桜はゆかし
粋な山吹桃椿 藤たをやかに 風ものどけし