さわり

 音がビーンと響く余韻、それが三味線の特徴であり、魅力でしょう。
 棹の最上部に、この余韻を生み出す工夫がなされています。下図のように、幅1cm程の極浅い溝(さわり溝)が切ってあり、更に、二・三の糸が通るところには上駒を付け、一の糸が通るところには1.5mm程の極小さい切り込みが切られています。

 糸を掛けると、二・三の糸は上駒に乗りますが、一の糸だけが棹に直接触れることになります。下図のように、一の糸は、切り込みで棹に触れ、さわり溝で一旦棹から離れます。そして、さわりの山で再び棹に接触します。この仕組みによって、糸が振動すると、基音と同時にビーンと響く高次倍音が発生します。この音が「さわり」で、この状態になることを「さわりが付く」といいます。

 さわりを付けるために、「吾妻ざわり」という特殊な装置を埋め込む方法もあります。いろいろな糸の張り具合に対応できるように開発されたもので、さわりの山を微妙に上下させられるように、山がネジ式になっています。

上駒

 棹の上部、糸巻きの下辺りに、上駒が付けられています。金属製で、折口と足付きの2種類があります。
 折口は、板状の金物を折り曲げたもので、糸が乗る上部は湾曲して、内部は空洞です。そして、下へ折った平らな面を糸倉側に接着します。
 足付きは、蒲鉾状の棒に2本の足が付いたもので、さわり溝に足を刺して固定します。
 折口の方が音の伝導が良く、この形が一般的です。一方、足付きは、三の糸の上駒から糸巻への角度が折口より緩やかなので、糸が高切れしにくいという利点があります。
 材料の金属には、真鍮・合金・9金・18金などが使われています。

※義太夫三味線は、モウソウ竹を蒲鉾状にした上駒が貼られています。