棹の構造

 棹の材料は、花梨(かりん)・紫檀(したん)・紅木(こうき)などの硬い木が使われています。どれも輸入材で、花梨は、タイ・ミャンマー・ラオスなど、紅木は、南インド地方で採れる木です。
 紅木は、栃の木のように、縞状のきれいな模様「トチ」が出ています。
 稽古には花梨、紫檀・紅木となるにしたがって高級品とされ、舞台用では紅木の棹が使われます。

 棹は、上の写真の工程で作られています。始めに、原木から、天神になる部分と上棹以下になる角材「荒木(あらき)」を切り出し、上棹・中棹・下棹の三つの部分に切断、切断面にほぞを作って継ぎ合わせ、棹の丸みが削り出されます。天神と中木が作られ、砥石で磨いて艶を出して仕上げられます。

※棹の表面に漆を塗布して仕上げをする作り方もあります。


 1本の細長い棒に見えますが、上棹・中棹・下棹の3本を継ぎ合わせているので、「三つ折れ」といい、一般的です。
 この他に、二つ折れのものや「延べ棹」という1本作りのものもあります。

 棹の継ぎ手部分は「ほぞ」と呼ばれる凹凸の差込になっています。紅木棹は、凹部にほぞ金具を埋め込んだものもあり、銀金具を入れた棹を「銀ほぞ」、金の金具のものは「金ほぞ」と呼び分けられます。また、金具を入れていない紅木の棹を「並紅木」といいます。金具は棹を繋いだときに、より強い力をかけて差し込めるようにし、棹と棹の密着度を高める細工です。

継ぎ手に、溝が施されています。

 長唄三味線は、胴に一番近い棹の下部は「鳩胸」と呼ばれ、なめらかな曲線を描いています。
 しかし、地歌の三味線など、他よりも高い勘所を押さえるものは、鳩胸ではなく、角張っています。