1日(水)
義父は若い時文学座にいた。
北村和夫さんとは同期だったのかとても仲が良かった。
僕も、北村さんにごちそうになったことがあるくらいで、
杉村春子さんに生まれて数ヵ月の娘を見せに行ったこともある。
文学座をやめてからは、義父はタクシー会社を営んでいた。
僕も娘も義父のことを「社長」と呼んでいた。
娘「えっ、社長って役者さんだったの?」
テ「うん、だっていい男だしな、っていうか、お前知らなかったのか?」
娘「知らないよー」
テ「劇団ってのは巡業があるじゃん、地方公演。
文学座が仙台に来たときには
杉村さんや北村さんや、多くの劇団の人たちにご飯ごちそうしたりしてたんだよ」
娘「社長すげーじゃん。立派な人じゃん」
テ「そりゃそうさ」
娘「ちーっとも知らなかった」
そう言った娘は、ちょっと誇らしげであった。
2日(木) 志の輔らくご in PARCO
朝、娘と出かけて帰宅。
支度して紫山会館へ。
4日に弾く「石橋」の下ざらい。
終わるとパルコへ。
渋谷でゆっくり食事が出来るかと思ったら意外に時間がなくて
そそくさ食べて楽屋入り。
3日(金) 志の輔らくご in PARCO
本日は実に穏やかな気候であった。
ゴルフ場からパルコへ。
たっぷり昼寝が出来る時間に着いた。
4日(土) 伝統長唄伝承の会&志の輔らくご in PARCO
伝承ホールへ。
このホールが出来たということは知っていたが、初めて行くホール。
渋谷から坂を上るのだ。
紋付袴で出かけている、歩くの疲れたわ。
「伝統長唄伝承の会」という長唄協会が初めて開催する研修会。
「石橋」の上調子を弾く。
終わると18時。
「石橋」を弾いた直矢くんと鉄六と僕は、そのままパルコメンバー。
呼んでおいたタクシーに乗り込んだ。
無事に劇場に到着し、事無きを得た。
ホッとする。
終演後の師匠の楽屋での飲み。
毎晩ここで飲んでいる。
最近、ゴルフ帰りが多いので車で来ることが多い。
今日は違うのだ。
久しぶりに楽屋でビールだ。
5日(日) 志の輔らくご in PARCO 千秋楽
千秋楽だ。
今回は5日から5日、丸一ヵ月間でした。
まーーーー、忙しかった。
志の輔師匠はもちろんだけど、私めも忙しかったーー、あわただしかったーーー。
いやいや、体力つきますわ、ホンマに。
ありがたいことですわ。
こちらのメンバーも誰欠けることなく健康で務めることができた。
これもありがたい。
そしてなにより、志の輔師匠に事故が無く、
滞りなく最後の一言まで喋り笑わせていることが素晴らしいのです。
ホッとした。
ホッとした。
ホッとした。
6日(月)
さぁ、今年最初の稽古日ですわ、東京の。
改めて2012年の始まりって感じです。
7日(火) 岡山稽古
新幹線に乗る。
ちょいと寒いなぁ。
岡山も今年初めての稽古。
お弟子さんと会うのはうれしいものです。
ホテルのチェックインの時、フロントの人が
「松永様、本日少しグレードを上げさせていただきました」
とキーをくれた。
部屋に入ったらトリプルルームだった。
ベッドが三つ並んでる部屋。
そんなの初めてだ。
びっくりしたーー。
どこで寝るかなぁ?
ま、真ん中でしょうな。
8日(水)
新幹線がやっぱり寒い。
毛布かけてコートかけて手袋してマスクして寝る。
野外かっ!
9日(木)
昨日も今日もお稽古日。
夜は家元宅で長唄協会の練習を。
久しぶりに砂場でお蕎麦。
10日(金)
今日で五日連続のお稽古日。
明日からちょいと日本を離れる。
パスポート出しとかなきゃとか、ラーメン食べとかなきゃとか、考える。
11日(土・祝)
早めに成田空港に着いた。
「象牙製品(撥など)を国外に持ち出しますよ」って申告するために。
30分くらいかかると聞いていたが、ものの2分で終わった。
いつもは誰かにやってもらったりしていたので
独りで申告に行くなんてことは初めてで。
多少ドキドキはしたが、なんなく済んだ。
逆に時間が余っちゃった感じ。
退屈なので志の輔師匠に電話。
志「ああ、いま着いたよ」
着いたらしい。
志の輔師匠、志のぽんさん、志の太郎さん。
それから初対面のコンプレッサーさん。
この五人で出発だ。
いつもながらだが志の輔師匠のVIPさに驚く。
いやいや驚いてはいけないのだ。
そんだけスゴイ人なんだけど、そばにいるとうっかりしてしまうのだ。
今回もJALの係の人の志の輔師匠への振る舞いは完ぺきであった。
レストランで軽く飲み、見送りにきたお弟子さんたちと別れ、出国しラウンジへ。
そこで軽く飲む。
もう結構飲んでる。
搭乗する。
ウェルカムドリンクから始まる。
飛ぶ前にすっかり出来あがってしまう。
気がついたら飛んでいた。
食事の時間のようだ。
機内食って久しぶりだなぁ。
食べて、映画を見ているとそろそろ着陸となった。
早いな。
6時間30分くらいかな?
意外に早いもんだな。
そしてホーチミンに到着。
飛行機出たところにお迎えが来ている。
さすがや。
入国。
ホテル・ニッコーサイゴン。
昨年の秋に出来た新しいホテル。
志の輔師匠の部屋で一杯飲んで解散。
自分の部屋に入る。
この部屋が実に面白い。
ドアを開けるとダイニングみたいになっていて
アイランドキッチンのような造りで湯船が置いてある。
シャワー室も別にある。
一応扉も無いわけではないが、二人で泊った場合、やっぱり湯船に入るのは見える。
でも一人であればなかなか面白い造りである。
開放的だ。
僕はとても気に入った。
12日(日) 志の輔らくご in ホーチミン 2012
今回の会場は、泊っているホテルの中にあるので、便利である。
移動しなくていいからね、とっても楽。
朝食に行きがてら会場を見、食べたあと会場作りに入る。
15時30分開演。
志の太郎くん志のぽんくんと前座が上がり、コンプレッサーさんのマジック、で
志の輔師匠登場。
笑い疲れたところで休憩。
僕が出て、志の輔師匠。
600人以上の人たちが年に一度の志の輔らくごを堪能した。
そしてかんぱーーい。
13日(月) ホーチミン
真冬のゴルフ場から突然、熱帯のゴルフ場に来た感じだ。
実際そうなんだが。
まー、緑さ。
フェアウェーだってカチンコチンでない、やわらかい、夏っす。
14日(火) ホーチミン~シンガポール
午後シンガポールに着いた。
日本との時差は、ホーチミンは2時間、ここシンガポールは1時間、
ちょいと日本に近くなったってことですな。
部屋に落ち着く。
スーツケース・ゴルフバッグ・三味線。
いつもながら不思議に思う。
海外の仕事にゴルフバッグもともにあるなんて考えたことも無かった。
数年前には想像もしなかったことが起きるものだ。
マリーナベイサンズ。
昨年出来た、2600人を収容するホテル。
3つのビルがあってその上に大きな船がのっかっているという、
これまた数年前には想像できなかった。
志の輔師匠は出来た途端に泊っている。
その対岸にある中華レストランで歓迎食事会。
景色抜群である。
マリーナベイサンズから発せられる光と水のショーがあって
湾を幻想的に彩る。なかなかなもんだ。
どっからかミッキーマウスが出てきそうだ。
15日(水) 志の輔らくご in シンガポール 2012
ちょいとお土産を買うようなところに寄り、
観光船に20分くらい乗る、クルーズってやつだ。
マーライオンを正面から見られるのだ。
ちょいと間抜けな顔がなんとも言えない。
昼食をとり会場入り。
いつものように会場作りが始まる。
お腹が減った。
なんで師匠の部屋に4つあったカップラーメンを持ってこなかったんだと
怒る、誰が?
僕が。
あーー、カップラーメンが食べたい。
もう限界だーー。
ジャンキーなものが食べたーーーい。
絶対師匠もそのはずなのだーーー。
隙を見てコンビニにカップヌードルを買いに行く。
全部チキン味。
うーーーん、醤油がほしいけどなーーー、まぁいいか。
テ「師匠どれにします?」
志「何があるんだ?」
テ「これとこれがチキンでこれが塩チキンでこっちがチキンなんとか」
志「うーーーん」
テ「人数分以上は買ってきましたからね」
志「よし、全部作れ」
テ「ヨッ、さすが師匠、気前がいい、ジャンキーにいきましょーーー、
さーーお弟子さーーーん、全部どーーんと作っちゃってくださーーー い」
志「なかなかうまいぞ」
テ「そうでげしょ、そうでげしょ、そろそろこういうジャンキーなのがね
欲しいころっすからねーー」
などと騒いでいるうちに開演時間となりました。
ベトナムと同じ順番で行きます。
16日(木)
「師匠をよろしくお願いします」
とお弟子さんたちに丁寧に送られ車に乗った。
僕と師匠はゴルフに行く、他の人たちは観光・・・かな?
コンプレッサーさんは日本に帰る。
また会えるのを楽しみにしていますぜ。
いやいや、やっぱり暑いなぁ。
一昨年、ベトナムとシンガポールのゴルフの時に熱射病っぽくなったので、
そのあと一年沖縄のゴルフ場で鍛えたのに、今年もやっぱりやられた感じだ。
後半から頭痛がしてくる。
ひ弱じゃなーーー。
ぐやじーーー。
もっと鍛えてやるーーー。
17日(金) シンガポール~バンコク
志「だって鉄九郎が行ったことないんだから連れてってやろう」
マリーナベイサンズに行くことになった。
志の輔師匠は昨年泊っている。皆んなは昨日行ったらしい。
師匠は高い所が苦手なのである。
だから一番上になんか昇りたくないに違いない。
けれども、行ってやろうじゃないかと言ってくれた、なんと男気な。
というわけで、毎日見ていたマリーナベイサンズ、
行くことはないのだろうなぁとあきらめていたが、連れてってもらうことになった。
「ほらほら鉄九郎さん、よく見てよく見て」と添乗の人たちに言われる。
57階だったかな?
一番上。
いやいや、なかなかの景色だ。
志の輔師匠もいるが景色のよく見える場所には来ない、
ずーっと下を向いて歩いている。
ヨっ、男気!!
志の輔師匠も昨年は行かなかったという、ホテルのショッピングモールへ。
いやいや高級高級。
テ「ししょーーー、プラダのキャディバッグが売ってまっせーー」
志「ほんとかよーー」
テ「ちょっと覗いていきましょーよーー」
志「わっ、すげーな」
テ「これお求めになったらどーですか?」
志「ばかっ」
テ「使えませんよねーー、このキャディバッグを入れるキャディバッグが必要でさーな」
確か値段を聞いてもらったんだがいくらだったかなーー?
志「ポルシェっていいデザインだよな」
テ「そうなんですよねー、いちいち洒落てんですよねーー」
志「このガラガラ(キャリーバッグ)タイヤがポルシェだ」
テ「おおっ、スゲー、なめらかな動きですよー、これ買えるかな?」
志「買えよ、買えるよ」
テ「あ、お客様、こちらにセールコーナーが。
お客様、このバッグなんかよろしいんじゃないですか?」
志「んっ?かっこいいじゃん」
テ「えっ?これ50%引きなんですか。
お客様、このバッグ半額だそうですよ」
志「なにっ、お前、そんなの見つけるんのうまいなー」
テ「手が届きますです、お客様」
志「届きますねーー(笑)」
ワーワー言いながら買い物して空港へ。
シンガポールともサヨナラです。
ここで最小人数の四人になった。
師匠と僕と志のぽんさんと志の太郎さん。
いままで結構な人数で移動していたからドッと淋しくなった。
そして無事にバンコクに到着。
いつものように飛行機出るとこにお迎えが。
バンコクだーーー。
お迎えにいらした全日空の副支店長さんが
「鉄九郎さん、バンコクは初めてですか?」
テ「いや、二度目なんですよ、生意気に」
副「ほほぉ、以前はいつごろに?」
テ「ええ、ざっと30数年前に一度」
次の言葉が出てこない副支店長。
30数年前じゃ、初めてと一緒じゃん。
ホテルに着くとはだか(寒空)さんが到着していた。
今朝の飛行機でスタッフと一緒に来たらしい。
ひとりで出歩いたと言う。
さすがである。
スポンサーの方たちとの食事会へ。
おいしい日本料理屋さんだった。
ホテルに戻ってくると「一杯だけ飲もうぜ」と師匠。
一杯飲んでると「お腹減ったな」
やっぱり言うんじゃないかと思った。
なぜなら、僕もだからだ。
テ「師匠の部屋にあるカップラーメンを食べよっかなーと思ってました」
志「よし、そうしよーー」
と師匠の部屋へ。
志「ぽーーん、全部のカップラーメンに熱々のお湯をいれてくれーーーい」
ま、全部と言っても4つなんですがね。
この4つのカップラーメン、あたしゃ東京から持ってきたのだと思っていたら、
なんとベトナムでお弟子さんたちが買ってきたそうな。
えらいっ!
師匠思い。
志「うまいぞーーこのカップラーメン。東京に帰ったら買っておいてくれーー」
なにも、東京に帰って買わなくてもなぁ、
たぶんここで食べてるからおいしいんだと思うのだけど。
でも、立派なお弟子さんたちは、そのカップラーメンの蓋を
丁寧にファイルにはさみ、持って帰ったのでありました。
後日どこかの楽屋に、そのファイルが置いてあった。
テ「このカップラーメンわかったのか?」
ぽ「いやー、わかんないっすねー」
そりゃそうだろ、日本じゃ売ってないと思うぞ。
志の輔らくご
記者会見
http://www.daco.co.th/movie/item/19449?__from=mixi
18日(土) 第14回 ANA寄席 2012 in バンコク
ここもホテルの中の会場なので便利。
朝食のあと会場に行き、いつものように舞台作り。
目途がついたら解散。
皆は今夜バンコクで泊る。
もちろんである。
明日、ゴルフしたり観光したりして、夜の飛行機に乗って帰ってくるのだ。
僕は今夜の飛行機で東京に帰ることになっている。
明日、日本橋で伝の会があるのだ、ははは。
「ははは」じゃない。
なんという綱渡りなんだ。
飛行機にもしものことがあったらどうするんだ。
もしもってのはあったらイカンのだが、
なんかの都合で遅れたりなんかするとドキッとしますよ。
今夜の23時55分発に乗って明日の7時30分に成田に着くのだ。
そこからまっすぐ日本橋に向かって、10時前には楽屋入りする感じなのだ。
そんなにうまくいくもんかね。
みんな心配している。
この日程を決めた志の輔師匠までもが
「お前もよくやるよ、どんなスケジュールだよ、
帰って明日昼夜やるんだぜこいつ、頭がおかしいんだよ」
などと、はだかさんに言ったりしている。
ともあれ、なんだかワサワサするのだ。
荷造りはしなきゃあかん、公開録音は迫っている、
何を弾こうか?何をパッキングしようか?
何を弾こうかというのはホントの話しで
「雪の合方」を弾こうと思っているのね、バンコクだから、暑いから。
でね、志の輔らくごの中に「しじみ売り」ってのがあって、
それには「雪の合方」が入るのです。
だから、もし僕の出番の後で師匠が「しじみ売り」をやったりすると
被るじゃないね。
失礼じゃないね。
だから僕、「雪の合方」弾こうかなというときは、師匠に前もって
「『しじみ売り』やらないですよね?」って聞いてるんです。
「やらないですよね?」って失礼な言い方だけど、
今日はやらないだろうなってのがわかるんで、
だから僕が「雪の合方」弾いてもいいなって思うんで、
だからちょいとした確認のために「やらないっすよね?」って聞いてるんですわ。
それがいつだったか、『しじみ売り』ってことはないなって日に、
じゃ「雪の合方」弾いてみっかなって時に、
「今夜は『しじみ売り』やらないですよね?」
って聞いたんですわ、休憩時間に、一席終わって楽屋帰ってきてる時に。
そしたら
志「『しじみ売り』?・・・・・・ホホーー、いいねぇ、時間的にもね、
そうだね、『しじみ売り』にしよ」
テ「えええっ??『しじみ売り』やるんでっか?・・・あ、はい」
ってな具合で、土壇場で弾く曲考え直したことがあったんです。
それからというもの、ここんとこ、ちょいと『しじみ売り』おやりになることがありましてね。
そしたら今日ですわ。
志「三つやろうかなと思って」
テ「ええっ?」
志「『○○○』となんかやって『しじみ売り』やろうかと思ってさ」
テ「あ、はい、ありがとうございます」
この「ありがとうございます」ってのは、師匠の考えで
「鉄九郎を連れて来てるんだから『しじみ売り』やって『雪の合方』を弾かせてやろう」
というやさしさなわけですよ。
で、つまりは僕の舞台で「雪の合方」は消えたわけです。
さて、何を弾くかってことを真剣に考えているの。
しかも、これ、録音されて機内に流すことになってるわけで・・・
いや、だから真剣ってわけでもないんですがね、いろいろと考えまさーね、
言葉の使い方とかね、そんなことですよ。
だから荷造りしながら何弾こうかなーって。
「鉄九郎さんはここを21時30分に出ないといけないのです」
はいはい。
「志の輔師匠大丈夫ですかね?」
なにがっすか?
「いや、三席おやりになるっておっしゃってて」
あらっっっ???!!!
たしかにそうなのである。
志の輔師匠、二席でもだいたい二時間半になる。
開演は19時。
お弟子さんが出る、志の輔師匠、はだかさん、志の輔師匠、
仲入りとなる。
そして僕が出る、志の輔師匠が出る・・・・・・ははははは、ははははははは
あーーーははははははは
無理無理無理ーーーーっ
二時間はおろか二時間半でも無理ーーーーっ
三時間、いやいや、ひょっとしたら三時間越えーーーっ
いやいやいやーーひょっとしなくてもーーーっ
しかも、最後は『しじみ売り』ーーー
最後の場面で三味線弾くしーーー
ぜーーーったい、21時30分にはここを出られなーーーい
あーーーっはっはっはーーー
明日の伝の会は邦さんのひとり会だーーーっ、あーーっはっはっはーー
いやいや驚く。
ただでは帰さない感じが楽しい。
志「そうだよ、邦さん一人でやれるって、お前なんかいないほうが却ってさ(笑)」
「却って」なんなんだーーーーー
結局「しじみ売り」の三味線を弾くことはあきらめなければなりませんでした。
以前録音したCD持っていらっしゃってた。
志「これもお前が弾いてるんだけどな」
テ「あーー、なつかしいですね、青山のスタジオで録ったやつですね」
志「そうそう」
2002年の志の輔パルコで「しじみ売り」を発表したときに
伝の会が「雪の合方」を頼まれて、録音していたのでした、なつかしぃーー
指定された時間に指定されたフロアに行ったら
もうすでに志の輔師匠とはだかさんは着席していた。
志「ああ、来ました来ました、鉄九郎です」
わっ、すびばせんっ!!
遅くなりまじだ。
記者会見の始まりです。
なんでも、毎回やっているそうです。
こちら在住の方たち向けのいろいろなペーパーの記者さんやら
インターネット関係の方たちやらへの会見ということですね。
内容はこちら http://www.daco.co.th/movie/item/19449 を
ご覧くだされば。
記者会見が終わると、おかゆを食べにいきました。
昨年おいしかったお店がうまいこと見つからなかったので、ホテル内で。
ホテルをウロウロしますと、今夜の志の輔らくごのために早々にやってきて
ブラブラしている人たちに会ったりします。
「キャーーッ、志の輔さんじゃなーーい?」
「わわわわっ、今夜今夜ーー」
「わっっ、ごんや゛びばずー」
志の輔さんのチケットは、国内のみならず大人気で
ホーチミンでもシンガポールでも数時間で売り切れたそうです。
そしてもちろんバンコクでも。
全日空のステータスをお持ちのお客様メインという制約がありながらも
700~800席が二時間で完売だそうでして、そして全席自由なのです。
じゃあ、早々と来るわなぁ、来る来る、前方で観たいもの。
で、本人と摺れ違ったらそりゃあ嬉しいっすよねー。
部屋に帰ってスーツケースをチェックして。
そして楽屋に指定されている部屋にゴルフバッグを運び、スーツケースを運ぶ。
はあはあしたところで三味線を持って行く。
もう一度部屋に戻る。
忘れてるものはないかと確認する。
とにかく部屋が広いですからね。
テレビだって二台ありますから。
トイレだって二つありますから。
しかもトイレが二つあるってことは今朝気がついたのですから。
広いっす。
歯を磨くとこだって二か所。
なんだか知らんがそのどっちもで歯を磨いた形跡がある。
気がつかずに。
おそろしいね。
「それじゃ、ありがとうございました。」
と部屋にあいさつをして楽屋へ。
開演15分前くらい。
すっかり時間がかかってしまった。
急いで着替える。
そして舞台袖へ。
いよいよ開演である。
お弟子さんが終わると志の輔師匠が上がっていった。
今回は出囃子は弾いていない。
CDで出ていく。
ちなみに僕もどの出囃子にするかを今朝決めた。
師匠が大爆笑を取り、はだかさんが出ていった。
とてもウケている。
はだかさんのネタを袖で聞いていると
大晦日のにぎわい座カウントダウンを思い出す。
バンコクで聞く「東京タワー」も格別なものだった。
再び師匠が一席やると仲入りとなった。
ただいま20時50分。
僕の出番が21時ってとこですか。
楽屋に置いてあるおにぎりがおいしい。
志「お前また食ってるのか!」
テ「おいしいですよ」
志「ったく、もう気分は東京に帰ってんだろ」
は「普通、出番の前にはお腹減らないんですよ」
志「だよなー、こいつおかしいんだよ」
テ「で、どれ食べます?」
志「食べないよっ(笑)おむすび食ってないで早く(高座へ)行ってこい」
テ「はい、行ってまいります、よろしくお願いをいたします」
さーて、何弾こうかなぁ、たぶん今思ってるやつでいいよーだなーー
今、師匠「おむすび」って言ったなあ
「おにぎり」じゃなく「おむすび」
うーーん、「おむすび」っていいな
たしかに「おにぎり」って言うよりもいいなぁ、「おむすび」の方が品があるし。
うーん俺はどうして「おにぎり」って言ってたんだろ?
「おむすび」っていう素敵な言葉があるのに。
などと考えていると舞台袖に着いた。
「たっぷりやってきてください」
とスタッフの人たちが言う。
「車は準備できてますから」と。
ス「じゃお願いします。客電から高座灯りになります、そして出囃子鳴ります」
テ「あ、出囃子早めに消してくださいね、お辞儀するまでなくて良いですよ」
ス「あ、はい」
だって出囃子の三味線終わったら三味線弾くなんて、妙だもんね。
素の時間をこしらえたかった。
「こしらえたい」なんてのもいいね。
「おむすび」「こしらえる」「わずらって」「おとむらい」
みんな良い言い回しだ。
なんてことを考えながら歩いて行った。
割れんばかりの拍手。
これは志の輔師匠のおかげの拍手。
志の輔師匠の高座がめちゃくちゃ面白いので、お客様がはじけている。
次に知らない人が出てきても
「おっ、よく来たな、はりきってやれよ」とか
「おっ、三味線弾くのか、よーし聞いてやるぞ」というような、
つまり心が広ーーい状態といいますか、お客様が満足しているので
余裕がある状態なんですね、今夜もその拍手だった。
ありがたいのである。
さて、しかし、この拍手に乗せられて自分が気持ち良くなってしまうとしくじるのだ。
志の輔師匠のお客様はそうは甘くないのである。
今が心に余裕があるだけで、元来おいしいもの好きなのだ。
食べ物で言うならば食通であるのだ。
うまいものを知っているのである。
そのありがたい拍手を浴びながら高座に座る。
約束どおり出囃子は早めに切ってくれた。
ちょいと素の時間ができた。
弾き始めた。
うん、大丈夫な感じな音だった。
拍手に送られて降りた。
志の輔師匠に「ありがとうございました」
志「おう」
中の舞が鳴っている。
お弟子さんが座布団を出している。
志「気をつけて帰れ」
テ「はい、ありがとうございました」
志の輔師匠がお客様の前に出ていった。
志「えー、本来二席のはずだったのですが、どうなってしまったのか、
もう一席させていただきます」
ものすごい拍手。
さてと。
楽屋に向かう。
「時間は大丈夫です、忘れ物のないように落ち着いてお支度ください」
はい。
楽屋に帰り時計を見ると21時20分を過ぎている。
ま、21時30分出発が10分遅れても大丈夫だろ。
着物を脱ぐと、志のぽんくんと志の太郎くんが畳んでくれた。
三味線も片づけられた。
スタッフの人たちが僕の荷物を運ぶ。
はだかさんも見送ってくれると言う。
ホテル正面に着く。
全日空の支店長さんまでもが見送ってくれている。
10人くらいでワーッと。
なんだか申し訳がない。
車に乗る。
この10人の中から誰かが一緒行ってくれるんだよな、と思っていたら
「ではお気をつけてーー」
「ありがとうございましたーー」
「じゃーーねーーー」 by はだか
「おつかれさまでしたーーー」 by ぽん&太郎
「空港に着いたら『中村』というものが迎えに出ますのでーーー」
車は走り出した。
うん?
どうやら誰も一緒に乗らないらしい。
運転手はバンコクの人か。
うーーん、何か話したい。
急にシーーンとなった。
うーーーん、何か話したい。
今、あんな華やかなとこから降りてきて、テンションめっちゃ上がってんのに。
この静けさがーーー、わーーーっ
かと言ってなぁ、片言の英語でなぁ、話してもなぁ、
どうせ「???」になっちゃうしなぁ。
一時間くらいかかるようなこと言ってたなぁ。
ナカムラがどーしたこーしたとか言ってたなぁ。
だれかが一緒に行ってくれると思って、なーーんも聞いてなかったよ。
大丈夫なんだろか?
だいたいこの車は空港に向かっているのだろうか?
景色に見覚えないし、字は読めないし。
だいたい、この旅でひとりっきりになったのは初めてだし。
お金も持ってないし。
この車のトランクに僕のスーツケースは入ってんのかな?
積んだとこ見てないし。
ゴルフバッグ入ってるかな?
腹減ってるし。
ビール飲みたいし。
そういやぁ、お風呂は入れないんだな、今夜。
わっ、気持ち悪い。
今夜お風呂無しかよー
髪の毛も洗えないんだーーー
風呂無しかよーー
空港に向かってるかな?
このままどっかに連れてかれたってわかりゃしないんじゃね?
なんのために?
ま、それがわかんないんだけど。
この運転手さんが、日本企業に使われていることに日々苛立っていたら?
いつもは善い人なのに、この会のスタッフから嫌なこと言われてムカついていたら?
あら、どうしよ?
大丈夫だったか?
誰か、僕の運転手に嫌なこと言わなかったか?
誰だろ?そんなこと言うのは?
太郎の猫背が気に入らなかったかな?偉そうに見えたりしてな。
「あの着物姿の猫背のヤツ腹が立つ、よし、後ろに乗ってるヤツを
ここが空港だよ、って遠くの原っぱに降ろしてやろ」なんて。
うーー太郎のやつめーー俺が原っぱに降り立ったら志の太郎のせいだぞ。
だから猫背はよくないって言ったんだーー
「ピシッとしなさい」ってもっと言っとけば良かった。
あんまり言うと「うるさいなー」とか思われるんじゃないかと
黙ってたのがいけなかった。
わーーーん
ここまでか。
原っぱなのか。
はー、ついに飛行機には乗れないんだ。
邦さん、明日ひとりでがんばってくれ。
ま、邦さんなら大丈夫だろ。
志の輔師匠も言っていた、「邦さんなら大丈夫だ」って。
俺は原っぱに投げ出されるよ。
いや、ちょっと待てよ、あきらめちゃいけないぞ。
車拾って空港に向かえばいいじゃんか。
大丈夫だよ。
はーーっはははは
そうなのだ大丈夫なのだ。
原っぱなんかこわくないのだ。
はっはっはーー、残念だな運転手くん。
そうはいかないんだよ。
あーあ、ビール飲みたいなーー
ちょっと安心したがな。
しかし、飛行場って英語でなんて言うんだ?エアープレイン・・・
エアーーー?
うぬっ?
な、なんて言うんだろ?
あーーー、やっぱりダメだーーー
飛行場って言えないものーーーー、わーーーー
やっぱり原っぱでおしまいなんだーー
車止めても飛行場が言えないじゃーーーん
あー、テンション高いなぁ俺。
だいたいちょっと落ち着いたらいいんじゃないか。
だいたいエアポートと言えないくらいで・・・
おおおっ、エアポートでいいんじゃねぇか。
飛行場、エアポート、エアポート、飛行場。
はーーーっははははは
よし。
もういい、おちつけとにかく、テンションたかすぎ。
わっ、やばっ、車が停まりそうだ。
エアポートって書いてある。
やったーー、エアポートで当たってたぜ。
運転手くんは?
どこかに電話をしている。
「ゴニョゴニョニョナカムラニョゴニョゴ」
おおお、今、たしかに「ナカムラ」って言ってたぞ。
するってーと、運転手くんはナカムラさんの携帯に電話をしているってことだな。
程無く、向こうから背の高いスーツ姿の、どう見ても「中村」という感じの人が
現地のこれもどう見ても超エリートな若者を連れて走ってきた。
運転手さんが僕に向かって「ナカムラサン」と言った。
おーー、サンキューサンキュー、ありがとーー
運転手さんがにっこり笑う。
僕は彼と握手をした。
ありがとーー、一瞬たりとも疑って悪かった、どうか許してくれ、
これも志の太郎の猫背がいけないんだ。あなたは良い人だった。
なんの心配も要らなかったんだ。では家族によろしく。
と日本語であいさつした。運転手くんは困った顔でほほ笑んでいた。
「中村です」
と中村さんは言った。
胸にぶら下がっているパスにも「中村」と書いてあったが、
中村さんはご丁寧に中村と書いた中村さんご本人の名刺を僕にくれた。
やっぱり中村さんだった。
中村さんは僕からパスポートを受け取ると原っぱに投げた。
いやいや、投げはしない。
まだテンションがおかしいのだ。
おかしいというよりますます上がってしまっている。
なにせ、これで安心なのである。
言葉は通じるし、もうなにもしなくてもたぶん機内に連れてってくれるだろうし。
超エリートくんがスーツケースやらゴルフバッグやら三味線をカートで運ぶ。
中村さんは、僕のパスポートと、どこからか取りだした飛行機のチケットを
一緒に持っている。
僕は手ぶらでその後ろをついて歩く。
中「いやぁ、こっちで待機だったものですから
志の輔さんの落語見られなかったんですよ」
テ「ああ、残念でしたねー、昨年はご覧になれたんですか?」
中「いや、実は私つい一か月前にこちらに来まして」
テ「ああそうでしたか」
中「あっと言う間に完売だったんですよね」
テ「はい、志の輔師匠はスゴイですからねぇ」
中「来年は見られるかなぁ?」
テ「だといいですねぇ」
終始和やか。
飛行場、いやエアポートはものすごく混んでいたが、僕はただ中村さんたちと歩くだけ。
税関とか出国とかした覚えがないままにドンドン進む。
なんだか政治家になったみたいだ。
中「この先の左にラウンジがございますのでそこでお待ちください。
お時間になったらお迎えにまいります」
と言って通されたのは、高ステータスのラウンジの一番奥の特別室だった。
個室なのである。
「では」と中村さんたちは出ていった。
とにかくビール飲もっ。
個室から出る。
そこら中に座っているVIPな人たちがVIPルームから出てきた僕に対して
一斉に視線を向ける。
ビールとコップを持ってVIPラウンジの中のVIPルームに戻る。
ソファに座ってビールを注ぐ。
おつかれさま、いただきます。
グイッと飲む。
カーーーッ、んまいっ。
ヒヤーー、しかし落ち着いたねぇ。
いやいや、ホッとしたしね。
あとは飛行機に乗れば良いのだからな。
もう少し飲んじゃおっかなーー、どうせ飛行機乗るだけだし。
おつまみもちょいと取ってきたりして。
しかし、VIPだなぁ、勿体ないなぁ、ひとりで。
今頃は独演会終わって打ち上げ場所に行って落ち着いたころかしら。
電話しても大丈夫なころかな、志の輔師匠に報告しなくちゃ。
テ「もしもし」
志「おー」
テ「ありがとうございました。あわただしくてすみませんでした」
志「無事に着いたのか」
テ「はい、しかもものすごくVIPなんです」
志「ははは、そうか」
テ「これも志の輔師匠のおかげです、ひとりじゃもったいないくらいです」
志「良かったじゃないか、じゃな気をつけてな」
テ「はい、師匠も無事に帰国してください」
志「はいよ」
もうひと缶飲んじゃおっかなぁ。
珍しいのである。
わたくし、大抵350ミリひと缶で充分なんですが、三缶飲もうってんだから。
しかもひとりで。
やっぱテンションあがってんでしょうね。
しかも全然酔わないもの。
23時55分発の飛行機だが大幅に出発が遅れた。
1時過ぎてたかな?
中村さんが「申し訳ありません」と言っていた。
あなたのせいではないっす、かえって申し訳ないです。
中村さんと超エリートくんが機体まで見送ってくれた。
テ「飛行機ん中は入れないんですか?」
中「そうなんです、ここまでなんです(笑)」
テ「ははは、ありがとうございました」
と握手。
機内に入って.三歩も歩けば僕の席なのに
そこまでは来られないというのがヤケにおかしい。
そりゃそうなんだが。
ずーっと持っていてくれた僕の荷物を
たったの三歩先の棚に入れることが出来ないというのが笑える。
僕は自分の荷物を受け取り、棚に入れた。
そして席に着いた。
さて、これで成田に7時30分に着くのか。
「マバシさま、お休みになれないのですか?」
キャビンアテンドさんは言った。
テ「はい、なんだか目が冴えちゃってね」
キ「寝酒かなにかお召し上がりになりますか?」
何か飲みやすいものをもらい映画を見る。
それでもいつのまにか寝たらしい。
目が覚めた時には辺りは朝日でいっぱいだった。
キ「マバシさま、おはようございます。間もなく着陸の準備に入りますが、
おうどん持ってまいりましょうか?」
搭乗したときにメニューをもらい朝食のオーダーをしたことを思い出した。
そうだ、朝食って感じは重いし、どうせどっかでお蕎麦食べるんだから
うどんにしよっと、なんだかわけのわからない思考で頼んでいたのだ。
「おうどん」が運ばれてきた。
なかなかおいしい。
半分だけ食べて下げてもらった。
そしたらちょうど着陸態勢に入った。
出発は一時間以上遅れたが、到着はきっちり時刻どおりだ。
7時30分成田空港着。
5時間半くらいしか乗ってないんだな。
近いね。
ありがたいがもう少し乗っていたかった。
眠りもちょっとだったし。
こりゃ今日は眠いぞ。
などと思いながら入国。
日本に帰ってきて何がありがたいかって言葉が通じることだ。
いっつも感じる。
みんな感じるだろうけど。
入国の時に感じる「ああ、言葉が通じて良いなぁ」って感覚を
いつも忘れちゃいけないんだと思う。
とかく「あの人がああ言った」とか「こんなこと言ってたらしい」とか聞く。
どう言ったっていいじゃん。
通じることが大事なんだと。
そんなに深く考えなくていいぜって。
通じるのが当たり前だと思うと
その先の「相手のことを考えながら言ったか」とかになる。
もちろん自分としては考えて話さなきゃいけない。
けれど他人にまで強制することはない。
人は人で良いのだ。
全部受け入れれば良いのだ。
こんな人もあんな人もいる。
考えなしで喋る人だっている。
もっと言えば、自分は考えて考えて喋っているって人だって、
ある人から見たら考えなしに喋ってるって思われるかもしれない。
自分はしっかりしなきゃいけないが、自分が正解じゃない。
いや、自分なんて決して正解なんかじゃない。
なことを思う。
こんな偉そうなことを言っている僕が、二時間後の9時30分、
日本橋三井ホールの楽屋外のインターホンから
「えっ?入れないんですか?どうして?
入り時間が10時30分になってるんですか?スタッフも?
いやいや、だって僕着いちゃったんですよ。
早く着くってスタッフに言ってあったのになぁ、入れないの?
いや困るよーーだってちょっとでも楽屋で寝ようと思って来たのにーー
誰もスタッフ来てないの?
ったくーー、なにやってんだよーーー
俺、成田空港から直行だって言ってあったじゃなーーい。
はい、ごめんね、あなたに言ったってしょうがないよねーー
スタッフによーー。うん、ちょっと言わせてーー
ほんっとボーーっとしてんだよ。
『成田空港に7時30分に着きます、そこから日本橋に直行します』って
言ってあったんだから、しかも俺出演者だよ、メインの。
本人がそう言ったのに、なんで10時30分からしか入れないようにしちゃうかなーー
わっけわかんないよーーー
二時間もあれば着いちゃうだろうってことがわかんないのかなぁ、
しかも10時30分って聞いてもいないんだよーー
はー、ちょっとすっきりしたわ、ごめんなさいね、いやいやごめんごめん、
朝からね、嫌な気分だよね。ん?ああ、もう大丈夫です。
うんうん、そこのコーヒー飲むとこで時間までいるから。
はいはい、ありがとー、すみません」
全然人の決めたことを受け入れていない自分がいた。
言葉は通じるくらいでいいのかも知れない。
20日(月)
二日酔いだ。
いや、ちがうかな。
疲れがドッと出たのかな、フラフラする。
いや、やっぱり二日酔いかな。
なんだかわからないが、とにかく原宿まで行かなければならない。
ゆっくり寝ていたいけど。
美容院の予約が取れたのだ。
今日の午前中に行かないと、長唄協会演奏会に長髪で出演ということになる。
10時30分に原宿の美容院に行く。
まだ気持ちが悪い。フラフラする。
カットしている間に元気になってきた。
来店した時の顔色は真っ青だったらしい。
帰宅して稽古。
21日(火)
昨日と今日と稽古日だ。
あわただしいが休んだところでシンドイだけだ。
お弟子さんたちの顔見てる方がどれだけ疲れが取れるか。
22日(水) 長唄協会演奏会
昨年は出演しなかったんだっけな?
二曲目の「忍車」を聴きたかったので早めに楽屋入り。
三味線を弾くということ、長唄を演奏するということ、メロディ、声、所作等々。
考えることはたくさんある。
最近、その「たくさんある」ということに気がついてきた自分が。
23日(木)
今日も稽古日。
24日(金) 徳島
徳島に行くには飛行機なのだ。
当たり前なのだ。
朝早い飛行機に乗ったのだ。
25日(土) 神戸
朝早くに出発して一路神戸へ。
ちょっと二日酔いだ。
なんとか神戸に着くまでに治らんかいなと思う。
三宮生田神社の近くの大関が下浚い会場。
着くや否や「『吾妻八景』と『靱猿』やーー」
おおおっ、一息着く間もないな。
ま、逆にありがたかったりする。
弾き始める。
明日のお浚い会の下浚いなのだ。
ジャンジャン弾く。
たくさん弾く。
終わった。
かならず終わる。
これがありがたい。
かんぱーーい。
26日(日) 和三千紘師おさらい会 ホテルオークラ神戸
そんなに二日酔いではない。
おさらい会開始。
弾く、弾く、弾く、唄う、弾く。
終わる。
無事に終了。
かんぱーーい。
27日(月) 浜松稽古
新神戸から新幹線で浜松へ。
一日お稽古日なのだ。
28日(火) 浜松
天気予報では3℃くらいと出ていたが、実際には風も無く暖かかった。
少し陽に焼けた。
オムライスを食べた。
お店でオムライスを頼んだのは今までの人生でも数回だろう。
記念すべき日だ。
29日(水)
今月最後の稽古日だが、ものすごく雪が降っている。
都心じゃ昼過ぎに雨っぽくなって積っていないらしいが
練馬をバカにしてはいけない。
雪国のように積もっている。
都立高校の受験発表から帰ってきた娘が玄関で
「パパ、都立落っこっちゃってごめんさない」と頭を下げた。
以前から娘に都立高校に行けと言っていたからだ。
テ「『ごめんなさい』と言われたからには叱るわけにはイカン」
娘「じゃさ、雪だるま作ってよ一緒に」
テ「お前なぁ、50過ぎのおっさんと中三の娘で雪だるまなんか作れるかよ、みっともない」
娘「だってこんなに降ってるんだよ」
テ「急いでつくるぞ」
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